茶助の備忘録

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【病院薬剤師】知りたくなくても・・・

茶助です。ぼくの仕事は病院薬剤師。個人情報漏洩になるので、「お前なんでシランプリなんだよ」「本当は知ってるんでしょ?」って言われること多数。口が裂けても、「〇〇さん、おれの病院に来てさぁ、こんなんだったよ~」なんて言えない。喉元でぐっとこらえる。

 

【幼馴染との再会(悲)】

担当患者リストに、幼馴染の名前を見つけた。小学生のころ、とてもお世話になった年上の▲▲くんの名前。昔の思い出がフラッシュバックした。小学校の縦割り班で一緒だったなって。学校全体で60人強の小さな所だったから、上の学年とのつながりは強かった。何度も家遊びに行って、きれいな家だった。よく泳いだ水泳場の近くだった。30年ちかく振りになるから、どんな再会になるかと思っていた。

 

・・・カルテを開くまでは。▲▲くんを見るまでは。彼は意識がなく、開けた目は焦点が合わなかった。まだ若いのに、老人のように骨ばってて、しわだらけで、寝たきりで床ずれができていた。彼は、若年性の認知症に倒れていたのだ。もう口から食べられないから、胸に高カロリー輸液のチューブが繋がっていた。そういえばさっき、彼の薬を混注調剤したなって思い出した。

 

もうこれは、再会とすら言えなかった。だって彼は、意識がないのだから。

 

彼は結婚し、妻子がいた。子供の年齢は、彼が病魔に倒れた時期と同じくらいだった。▲▲くんは、ちゃんと娘を抱いたのだろうか。娘は、おとうさんを知らずに育ってきたのかな。むごい神様だと思った。こんないいひとだった▲▲くんを、どうしてーーー

 

【奇跡は起きなかった】

奇跡が起きてほしいと、思っていた。医療人として無理だろうな、この状態から回復した人は見たことないな、と思いながらも。だけどそれじゃ娘さんがあんまりだって思った。お父さんに抱かれて、お父さんと遊べる普通の幸せを、味わってほしいから。

 

でも、▲▲くんは亡くなった。病魔に苦しんで、意識のないまま。奇跡は起きなかった。他人が口出すことではないのだけど、家族は悲しいの同時に、彼の介護から救われたのではないかとも思った。

 

【他人事だから・・・】

ついに▲▲くんが(死亡)退院するまで、昔お世話になった●●(ぼくの名前)ですって言えなかった。仕事だから、むこうが気が付かないなら、仕事に関係ない話はしない。本当はお墓に行って、花を添える位はしたいのだけど、たかがスタッフで家族でも友人でもない僕が、いく権利あるのかなって感じる。他人事なんだから。

 

娘も妻の悲しみも、僕が思う以上かもしれないし、僕が思ったほどでなく踏ん切りがついているのかもしれない。

 

たとえば踏ん切りがついていて、娘はお父さんを知らずとも、お父さんがわりの親戚兄さんとか、いるかもしれない。友達が多くて、それだけでも幸せかもしれない。

 

反対に僕が思う以上で、一度でもいいからパパに抱きしめてほしかった、自分の名前よんで欲しかった、なんて思っているかもしれない。

 

【知り合いがきても】

無難なのは、たとえ知り合いでもほかの患者と同じように接して、個人的感情だとかを挟まないこと。「あの人にだけ親切だ、えこひいきしている」なんて言われたら目も当てられない。

 

それにだれかに「〇〇入院しただろ」って言われてもシランプリすること。自分の感情を、一生胸にしまい込むこと。

 

出身地の近くの病院は、本当に知り合いが多くて困る。懐かしい会話することもあるけど、「危ないなぁ」って事も沢山ある。知りたくなくても、知っちゃうことがある。