【投資】医薬品売上と株を考える
本業は薬剤師の茶助です。薬をさわる・正しく使う事が僕らの仕事。だから薬には詳しくなるし、薬には不景気・好景気の波がなく(治験成功・失敗・適用拡大・特許切れなどの別の波はある)安定を感じる。医薬品セクターが「ディフェンシブ株」とされる理由もよくわかる。その医薬品株の投資に、仕事スキルが大いに生きるのはうれしいかぎり。
【医薬品売上ランキング】
医薬品名 | 売上高 (億ドル) |
会社名 | 特許 切れ |
バイオ 薬 |
治療対象 | |
1 | ヒュミラ | 254.85 | アッヴィ | 〇 | B | リウマチ |
2 | ランタス | 104.14 | サノフィ | 〇 | B | 糖尿病 |
3 | エンブレル | 101.81 | ファイザー | 〇 | B | リウマチ |
4 | エリキュース | 101.21 | ファイザー | 心房細動 | ||
5 | ザレルト | 91.78 | バイエル | 心房細動 | ||
6 | レミケード | 77.68 | JNJ | 〇 | B | リウマチ |
7 | オプジーポ | 75.43 | 小野薬品 | B | がん | |
8 | ノボラピッド | 73.54 | ノボノルディスク | 〇 | B | 糖尿病 |
9 | キイトルーダ | 72.16 | メルク | B | がん | |
10 | ジャヌビア | 71.23 | メルク | 糖尿病 | ||
11 | リリカ | 69.33 | ファイザー | 神経症 | ||
12 | ステラーラ | 68.32 | JNJ | B | リウマチ | |
13 | ハーセプチン | 66.86 | ロシュ | B | がん | |
14 | セレタイド | 65.59 | グラクソスミス | 気管支喘息 | ||
15 | マブセラ | 64.62 | ロシュ | B | がん | |
16 | アバスチン | 63.43 | ロシュ | B | がん | |
17 | ヒューマログ | 61.94 | イーライリリー | 〇 | B | 糖尿病 |
18 | エプクルーサ | 58.55 | ギリアド | C型肝炎 | ||
19 | ゲンボイヤ | 56.21 | ギリアド | HIV | ||
20 | シムビコート | 53.29 | アストラゼネカ | 〇 | 気管支喘息 |
どうして日本でなく全世界ランキングなのかといういと、長期的にみて医薬品売上の伸び方は日本<全世界だから。株を買って、ほとんど売らずに何十年もホールドしたいので、できるだけ放置で上がっていく分野で勝負したい。
脱線するが、日本発の薬がオプジーポ(成分名:ニホルマブ)しかないのが寂しい。
【医薬品株=ディフェンシブ?】
全開ブログでも書いたが、たしかに好景気・不景気はあまり関係ない。(米国だと不景気で保険料ランクをさげた➡高い薬は使えない➡医薬品売上ダウン、なんて少しありそうだけど)
でも、波がない訳ではない。「好景気・不景気の波」はなくても「治験の成功・失敗」「適用拡大」「特許切れ」という別の波がある。
このブログで書いたエーザイ・小野薬品の例は極端だけど、波がない・安定的な右肩上がりばかりでもない。
【医薬品株のゆくえ】
予想はつくと思うけど、僕も右肩上がりだと信じている。
売り上げランキングの治療対象(=適応疾患)は、リウマチ・がん・糖尿病・心房細動といったところ。がん・糖尿病・心房細動は明らかに高齢化とともにふえる疾患である。リウマチも一度発症するとずっと治療薬つかうので、減ることはない。
つまり高齢者増加すれば、医薬品売り上げ規模はさらに膨らんでいく。
高齢者増加すれば、医薬品メーカーの株価は右肩上がりとなる。
日本の高齢者増加は2025年(団塊世代の後期高齢者化)で頭打ち。いっぽう世界はまだまだ増加している。だから世界を見た方がいい。
【医薬品株でみたい所~バイオ医薬品】
高額医薬品にバイオのBマークを多く見かけると思う。意味があって、このようになる。
バイオ 薬 |
薬の種類 | 特許切れ後 の同成分薬 |
特徴 |
B | バイオ医薬品 | バイオ後続品 | バイオ後続は作りにくい =特許切れても売上減りにくい |
(なし) | 低分子医薬品 | 後発医薬品 | 後発品は作り易い =特許切れで売り上げ激減 |
株価と連動する部分=売上を切り取っていうと、こうなる。これまでの薬は「低分子医薬品」で、特許がきれるとすぐ売上が減ってしまう。
低分子医薬品の特許切れの例は、「リピトール(ファイザー社)」。2010年は世界一売り上げた薬だった。が、特許は2011年11月で失効。12月から世界中で出回った後発品に取って代わられ、12年のリピトール売上は半減(56億ドルの売り上げ減)。看板商品・リピトールを失ったファイザー社もまた、売上世界一から陥落した。このように「後発医薬品」」のほうはカンタンに真似される。
いっぽう、バイオ医薬品の特許切れの例は、「ヒュミラ(アッヴィ)」なんと2016年にすでに特許切れしている。当然バイオ後続品も続々と・・・と思いきや
カンタンに真似できない ➡ バイオ後続品が作れない ➡先発品が売り上げキープ
となっている。じつはとっくに特許切れの18年は、前年比10%増の売り上げだった。バ売上上位をバイオ医薬品が占めており、また特許切れても売上が落ちにくく、強いと言える。
もちろん例外もある。つまりバイオ医薬品の特許切れで、真似できてしまった薬も。例えば「グラン」「ランタス(2018年は第2位だが)」などがそう。グランに至っては、半分以上がバイオ後続品の「フィルグラスチム(モチダ)」に取って代わられてた。
【茶助の思い込み】
医薬品売上ランクでも、低分子医薬品はあまりあてにしない。バイオ医薬品の売り上げがおおい会社が、これからも売上・株価・配当金を伸ばしていくように思う。
また医薬品業界は、参入障壁がとても高い(初期費用・クリアしないといけない施設基準などが大変)。逆に他業種の参入しにくい、守られた世界だと思う。
それでいて、売上は右肩上がりと推測される。だから長期保有しつづけるのには、向いていると思う。実際に、この業界は配当金を何十年も増やし続ける「配当貴族」「配当王」が多い。
【医薬品株で配当貴族・王】
ティッカー | 社名 | 連続増配 年数 |
JNJ | ジョンソン& ジョンソン |
56 |
BDX | ベクトン・ ディッキンソン |
47 |
ABT | アボット | 46 |
ABBV | アッヴィ | 45 |
MDT | メドトロニック | 41 |
配当貴族・王はこれだけある。アッヴィは、あのヒュミラの会社。ジョンソン&ジョンソンも、医薬品売上ランキングに2つも商品をもつ。また連続増配の会社は、今までのリターンと、未来の予測リターンも共に市場平均より高いことが解っている。
【結論】
●バイオ医薬品の会社は長期ホールド向き
●医薬品株の売り上げは右肩上がり
●実際に配当貴族・王も複数ある