茶助の備忘録

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【投資×薬剤師】薬と株価

僕の本業は病院薬剤師で、これのお陰で飯が食べられている。でも副業的に、株式投資も続けている。一見全く関係ないのだけど、実は「製薬企業の株価」の分析・選び方には役立つこともある。

 

【新薬メーカーはジェットコースター】

肌で感じるのは、①新薬メーカーは上下が激しい。②後発医薬品メーカーは安定的。 

 

①の例として、エーザイ

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エーザイの株価201902~202002


★1 3/22前後1週間の暴落は、19.8%も落とした。理由は、アルツハイマー治療薬の治験中止。治験中止のワンフレーズだが、それは億単位のプロジェクトが水の泡になった事。

★2 10/23の暴騰は、ストップ高は、治験中止したはずのアルツハイマー治療薬が、米国で承認申請すると発表したこと。

 

①の例:小野薬品工業

①先発品メーカーの上下激しいのは他にも。小野薬品工業は10年前は主力のオパルモンの特許がきれて、そろそろ大手に買収されるのではとされていた。株価は1000円前後。それが、ある新薬の発売で劇的に上昇した。

 

あの高額医薬品「オプジーポ」。株価は2014年1月の1900円➡2016年3月は6000円近くになった。開発者は京都大学本庶佑先生、ノーベル賞も受賞された。高額にも関わらず採用・保険適用(つまり税金使って補助する)となったのはこれまでにない作用の薬(抗がん剤なのに癌細胞をピンポイントで攻撃できる)で、救えなかった筈の命がこれで救えると判断されたから。

 

この薬は抗がん剤だが、使える癌種が増えれば当然、使用本数が増える。つまり小野薬品の売り上げが上がる。

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小野薬品工業2010~2020の株価
14年 9月 オプジーポ発売、悪性黒色腫に適用
15年 12月 非小細胞肺がんに適用拡大
16年 4月 オプジーポを非小細胞肺癌につかった場合、薬価が年17500億になると公表
7月 頭頸部癌に適用拡大
9月 腎細胞がんに適用拡大
11月 ★オプジーポの薬価の50%引き下げを了承
12月 オプジーポの売り上げ予測を1050億円に下方修正
12月 胃がんに適用拡大
17年 1月 オプジーポの薬価引き下げ


ただし高額医薬品ということは、小野薬品は儲かるが日本の財政を圧迫すること。じっさい2014年の薬価で1年使えば、患者一人で年間3500万円(!)の薬剤費になった。それで、17年1月をまたず、16年中に急遽・50%の値下げを行った。

 

当然小野薬品の売り上げ低下が見込まれ、株は売り込まれた(=下がった)。

 

<医薬品メーカー=ディフェンシブ株は本当か?>

よく「不景気でも薬は削れない。医薬品メーカーは不景気でも売れるから、ディフェンシブ株だ」って言われる。不景気の影響は薄いが、ないとは言えない(たとえばオプジーポの発売がバブル真っ只中の1988年だったら、緊急薬価値下げ➡小野薬品の売り上げ低下なんてなかっただろう)が、少ない。不景気とは関係ないところでも、治験の失敗などの不確定要素が大きい。

 

だから、先発品メーカーの株価は「不景気に左右されにくいが、安定するわけではない」と思う。いわゆるディフェンシブ株とはいえないと思うし、僕は怖くて持てない。

 

後発医薬品メーカーは安定的】

いっぽうで、後発医薬品メーカーは安定しているように思う。僕は13年も薬剤師しているが、後発医薬品の使用はどんどん進んでいる。病院でも、調剤薬局でも。

 

後発医薬品メーカーは、大きなリスクを背負わない。つまり先発医薬品開発のときの、億単位の治験費用・申請費用など。先発品と同じ成分を作れさえすれば、成功は保障されている(すでに発売10年分の、莫大な臨床データがあるから)。そのぶん薬価は安いのだが(先発品の30~60%程度)、それでも低リスクの恩恵は大きい。

 

後発医薬品メーカーでよく耳にするのは

後発が主力
のメーカー
日医工
沢井製薬
日本ジェネリック
日本ケミファ
東和薬品

低リスクな売り上げのためか、先発品メーカーがサブブランドを立ち上げ、後発医薬品を発売する。それがこちら。

先発メーカーの
サブブランド
EMEC
第一三共エスファ
あすか製薬
田辺三菱

サワイは右肩上がりで、日本一(2018年)売り上げている後発品メーカー。他のメーカーは元の薬価に落ち着いてしまっているが、先発品メーカーの株価よりも上下が小さい。最近後発医薬品メーカーの株価が下がり気味(日医工日本ケミファなど)なのは、先発品メーカーのサブブランドが強くなってきたからだと思う。

 

<茶助の思い込み>

この数年、後発品はサブブランド系が増えたように感じる。サブブランド先発品メーカーのようなお金のあるところが、最後には市場を握ってしまうのだと感じる。日本でお金をもっているのは財閥系だと思う。三菱・三井・住友(いずれも総合商社をもつ)が3大財閥だから、こういうところが商機をみつけ、最終的には利益をとるんじゃないのかって思う。

 

だから僕は、総合商社の株を買っている。「三菱商事」「三井物産」「住友商事」は100株以上ずつ持っている。