茶助の備忘録

★★現行ブログはコチラ

【病院】【業務改善】抗がん剤の用量自動計算×Excel

最近投資ばかりの記事でしたが、久々に病院薬剤師としての記事を。

 

 

f:id:chaske1024:20200307000749p:plain


 

抗がん剤の管理問題】

抗がん剤を導入する際、皆がなやむ問題は

 

抗がん剤の用量計算」「点滴の順序・投与時間の管理」

 

だと思います。

①用量計算が面倒

抗がん剤ぜんぶの添付文書(今日の治療薬のページ)をひらいて、電卓叩いて計算して、それを電子カルテに書いて・・・

 

 ②順序・投与時間が面倒

「S-1+CDDP+T-mab療法」だからシスプラチンの前に輸液500mL 打たないと。あれ、トラスツズマブ(ハーセプチン)ってどのタイミングで追加するんだっけ?抗がん剤ぜんぶ打ったから、あとの輸液いらないよね??(実際はシスプラチンの後2日間は、ひたすら水を点滴する必要あり)

 

これ、工夫である程度解消します!僕の形式でよければ、参考にください。

 

Excelの準備】

 例として、「S-1+CDDP療法」をあげます。これは①進行胃がんで第一選択で頻用なのに、②内服・点滴両方使う、③点滴スケジュールが複雑、という困りもの。外科医・点滴看護師・薬剤師を悩ませるNo1のレジメンではないでしょうか?

 

これもExcelでレジメンをつくれば、困り方具合も減るはずです。

f:id:chaske1024:20200309015922p:plain

①まず、使いたいレジメン名を打ちます

困りもののS-1+CDDP療法を例に挙げました。

 

②体表面積は、自動計算できます。

 Du Boisの体表面積式

 体表面積(㎡)=身長(㎝)^0.725×体重(Kg)^0.425×0.007184

 

これをExcelに入れると、この例ではB5セルに

 =B3^0.725*B4^0.425*0.007184

と入力。すると・・・

B3に身長、B4に体重を入れるだけで、B5に勝手に体表面積がでてきます。もう関数電卓たたく必要ありませんね。

 

③レジメンでつかう抗がん剤を入力する

この例では、F3,F4,F5,F6,F7セルに抗がん剤名いれました。この右側に、抗がん剤用量がでる寸法ですね。

 

 

抗がん剤の用量調べる】

ここ、まとまってて調べやすくてオススメです。

S-1+CDDP(SP)|胃癌のレジメン講座|消化器癌治療の広場 GI cancer-net

抗がん剤の用量は、S-1+CDDP療法レジメンだとこうです。

S-1 1.25㎡未満 40×2回
1.25~1.5㎡未満 50×2回
1.5㎡以上 60×2回
CDDP 65 ㎎/㎡

これを、さきほどのセルに入力します。

f:id:chaske1024:20200309024409p:plain

①シスプラチンの式は、カンタンです。「体表面積㎡あたり、60㎎」なので、

体表面積×60➡H4セルに、「=B5*60」と入れる。

 

②のティーエスワンは難しい。

そこで、IF式・AND式を活用します。

 

=IF(B5<1.25,”40㎎×2回”,””)

この例の意味は、「B5が1.25未満のばあい、40㎎×2回というテキストを表示しなさい。そうでなくば、空白というテキストを表示しなさい」という意味。

 

実際はB5によって3段階必要です。だから式は

=IF(B5<1.25,"40㎎×2",IF(AND(B5>=1.25,B5<1.5),"50㎎×2回",IF(B5>1.5,"60㎎×2回","")))

 

ちょっと長いですよね。これは3段階にわける考え方で、

①B5が1.25未満の場合、40㎎×2回というテキストを表示し、そうでなくば

②B5が1.25以上 かつ B5が1.5未満の場合、50㎎×2回というテキストを表示し、そうでなくば

③B5が1.5以上の場合、60㎎×2回というテキストを表示し、そうでなくば空白というテキストを表示しなさい

という意味です。

 

【これで何ができるのか?】

レジメンがきまったら、身長。体重をExcelに入力するだけで、抗がん剤の用量が自動計算されます。

f:id:chaske1024:20200309030306p:plain

 

身長・体重の入力が面倒な方。身長・体重は「電子カルテから自動で引き抜く」こともできます。身長・体重のB3/B4セルに、引き抜きアドレスを入れるだけです。僕の病院では、そういう運用で、いちいち入力しません。このExcelをえらんで、開いた瞬間に計算できています!

www.dropbox.com

【おまけ:抗がん剤の調べ方】

レジメンでつかう抗がん剤量を添付文書で調べましょう。添付文書は、このPMDAのサイトが使いやすいです。

www.info.pmda.go.jp

理由は①紙の添付文書のレイアウトそのままで出てくる、②Ctlr + F キーで、ほしい単語が一発検索できる(これはパソコンならでは)

 

この例ではS-1+CDDP療法でしたね。ではまず、S-1の薬:ティーエスワンを調べましょう。

f:id:chaske1024:20200309022110p:plain

こんな風にして、ティーエスワンの添付文書にたどり着けます。ひらいたら、左下の「PDFファイル」をクリックします。

 

では、このPDFページで、「Ctlr + F」キーを同時押し。

f:id:chaske1024:20200309024836p:plain

すると検索窓がでます。ここにすきな検索ワードいれて、Enterキー。すると

その単語の箇所まで、ページがジャンプします。これ、けっこう便利。

 

【さいごに】

薬剤師は「薬の専門家」です。ですがその方向性がかわり、調剤の専門家だけでなく、薬の情報コンシェルジュにもなってきています。情報を覚えておくのではなく、情報の使い方・引き抜き方を知っておくことが大事です。

 

情報の引き抜き・使い方はまだまだ、薬剤師間で差があります。全薬剤師が業務量増加で苦しむ中、その助けになったらと思い、記事にさせていただきました。