【病院】【業務改善】抗がん剤の用量自動計算×Excel
最近投資ばかりの記事でしたが、久々に病院薬剤師としての記事を。
【抗がん剤の管理問題】
抗がん剤を導入する際、皆がなやむ問題は
「抗がん剤の用量計算」「点滴の順序・投与時間の管理」
だと思います。
①用量計算が面倒
抗がん剤ぜんぶの添付文書(今日の治療薬のページ)をひらいて、電卓叩いて計算して、それを電子カルテに書いて・・・
②順序・投与時間が面倒
「S-1+CDDP+T-mab療法」だからシスプラチンの前に輸液500mL 打たないと。あれ、トラスツズマブ(ハーセプチン)ってどのタイミングで追加するんだっけ?抗がん剤ぜんぶ打ったから、あとの輸液いらないよね??(実際はシスプラチンの後2日間は、ひたすら水を点滴する必要あり)
これ、工夫である程度解消します!僕の形式でよければ、参考にください。
【Excelの準備】
例として、「S-1+CDDP療法」をあげます。これは①進行胃がんで第一選択で頻用なのに、②内服・点滴両方使う、③点滴スケジュールが複雑、という困りもの。外科医・点滴看護師・薬剤師を悩ませるNo1のレジメンではないでしょうか?
これもExcelでレジメンをつくれば、困り方具合も減るはずです。
①まず、使いたいレジメン名を打ちます
困りもののS-1+CDDP療法を例に挙げました。
②体表面積は、自動計算できます。
Du Boisの体表面積式
体表面積(㎡)=身長(㎝)^0.725×体重(Kg)^0.425×0.007184
これをExcelに入れると、この例ではB5セルに
=B3^0.725*B4^0.425*0.007184
と入力。すると・・・
B3に身長、B4に体重を入れるだけで、B5に勝手に体表面積がでてきます。もう関数電卓たたく必要ありませんね。
③レジメンでつかう抗がん剤を入力する
この例では、F3,F4,F5,F6,F7セルに抗がん剤名いれました。この右側に、抗がん剤用量がでる寸法ですね。
【抗がん剤の用量調べる】
ここ、まとまってて調べやすくてオススメです。
S-1+CDDP(SP)|胃癌のレジメン講座|消化器癌治療の広場 GI cancer-net
抗がん剤の用量は、S-1+CDDP療法レジメンだとこうです。
S-1 | 1.25㎡未満 | 40×2回 | ㎎ |
1.25~1.5㎡未満 | 50×2回 | ㎎ | |
1.5㎡以上 | 60×2回 | ㎎ | |
CDDP | 65 | ㎎/㎡ |
これを、さきほどのセルに入力します。
①シスプラチンの式は、カンタンです。「体表面積㎡あたり、60㎎」なので、
体表面積×60➡H4セルに、「=B5*60」と入れる。
そこで、IF式・AND式を活用します。
=IF(B5<1.25,”40㎎×2回”,””)
この例の意味は、「B5が1.25未満のばあい、40㎎×2回というテキストを表示しなさい。そうでなくば、空白というテキストを表示しなさい」という意味。
実際はB5によって3段階必要です。だから式は
=IF(B5<1.25,"40㎎×2",IF(AND(B5>=1.25,B5<1.5),"50㎎×2回",IF(B5>1.5,"60㎎×2回","")))
ちょっと長いですよね。これは3段階にわける考え方で、
①B5が1.25未満の場合、40㎎×2回というテキストを表示し、そうでなくば
②B5が1.25以上 かつ B5が1.5未満の場合、50㎎×2回というテキストを表示し、そうでなくば
③B5が1.5以上の場合、60㎎×2回というテキストを表示し、そうでなくば空白というテキストを表示しなさい
という意味です。
【これで何ができるのか?】
レジメンがきまったら、身長。体重をExcelに入力するだけで、抗がん剤の用量が自動計算されます。
身長・体重の入力が面倒な方。身長・体重は「電子カルテから自動で引き抜く」こともできます。身長・体重のB3/B4セルに、引き抜きアドレスを入れるだけです。僕の病院では、そういう運用で、いちいち入力しません。このExcelをえらんで、開いた瞬間に計算できています!
【おまけ:抗がん剤の調べ方】
レジメンでつかう抗がん剤量を添付文書で調べましょう。添付文書は、このPMDAのサイトが使いやすいです。
理由は①紙の添付文書のレイアウトそのままで出てくる、②Ctlr + F キーで、ほしい単語が一発検索できる(これはパソコンならでは)
この例ではS-1+CDDP療法でしたね。ではまず、S-1の薬:ティーエスワンを調べましょう。
こんな風にして、ティーエスワンの添付文書にたどり着けます。ひらいたら、左下の「PDFファイル」をクリックします。
では、このPDFページで、「Ctlr + F」キーを同時押し。
すると検索窓がでます。ここにすきな検索ワードいれて、Enterキー。すると
その単語の箇所まで、ページがジャンプします。これ、けっこう便利。
【さいごに】
薬剤師は「薬の専門家」です。ですがその方向性がかわり、調剤の専門家だけでなく、薬の情報コンシェルジュにもなってきています。情報を覚えておくのではなく、情報の使い方・引き抜き方を知っておくことが大事です。
情報の引き抜き・使い方はまだまだ、薬剤師間で差があります。全薬剤師が業務量増加で苦しむ中、その助けになったらと思い、記事にさせていただきました。