茶助の備忘録

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【病院薬剤師】痛み止めの麻薬

 

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病院薬剤師の茶助です。僕は先月から、がん患者様のいる病棟に配属となった。その時思ったことをいくつか書きたい。

 

 

【1.ひどい痛みには麻薬が最適解】

みなさん「麻薬」ときくとどんなイメージ?「アヘン戦争」「麻薬中毒」「依存性強いから、二度と辞められなくなる?」と、悪いイメージ先行だと思う。

 

じゃあ、医療現場ではどういう扱いか。「正しく使えば、依存性は出ない」「酷い痛みを抑えるのに、最適の薬」とされる。

 

がん性疼痛や、急性膵炎、心筋梗塞発作などでの酷い痛みを抑える時、ロキソニンやイブといったいわゆる「痛み止め」では不十分。このとき、医療用麻薬をガイドライン通りに使えば、ほかの薬と段違いにラクになる。そしてガイドライン通りに使えば、依存性は問題にならない。これが医療用麻薬の効果で、がんや膵炎・心筋梗塞などのガイドラインに、「麻薬を使いなさい」とまで書かれる理由。

 

他では得られない位の素晴らしい薬なのに、麻薬をためらうがん患者さんが多い。理由は「依存性が強い、一生辞められないのでは」「おれも麻薬がないと生きていけない体なのか」って考えてしまうから。実際訪問看護の末期がん患者さんで、麻薬を怖がって最後まで増量せず、痛い痛いと苦しんでなくなった方がいた。

 

でも違う。先ほども書いたけど、「正しく使えば依存性は問題にならないとされている。

 

理由は一説にはこう(出身大学の網中教授が言っていた)。麻薬は脳内の「オピオイドμ受容体」というところにくっついて効果が出る。このオピオイドには、μとγ(θだったかも)のバランスがある。正常人はμ=γで釣り合う。だががん患者さんだと、μ<γにバランス崩れ、それで痛みがでる。そこで、不足しているμを強めるのが麻薬の出番。釣り合うことで痛みはおさまり、体は正常に近づく為に依存性も出ない、ということだ。

 

【2.がん患者さん人生最後の薬】

がん発症すると、ステージごとに薬は変わっていく。最初は「抗がん剤と痛み止め」➡

抗がん剤と痛み止めと麻薬」➡「痛み止めと麻薬」➡「麻薬(呑み込めないので張るタイプのフェントステープ)+とんぷく麻薬(オキノーム)」➡「ドルミカム注射液」

 

先ほど、麻薬は素晴らしい鎮痛効果があるとお伝えしたのだが、それでさえも呑み込めなくなる時が来る。人生最後の薬はオキノームではない。ドルミカム注射液となることが多い。

 

これは鎮痛効果ではなく鎮静効果。呼吸も苦しい最末期に、意識レベルを落として眠らせる薬。それまで呼吸も苦しかった患者さんが、安らかな表情で寝息を立て始める不思議な薬。もちろん理由があって、脳が寝ることで酸素消費が減り、体が酸欠でなくなるため、安らかになる。ちなみにこれを使わざるを得ないときは、数日と持たない場合が多い。